身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
「このままの経営を続けていれば、みなせ屋は援助を続けたとしてもいずれ立ち行かなくなる。改革的なことが必要だと俺も思うよ」

だが、当の水無瀬社長にその気がなくて困っている、と仁は言いたいのだろう。

仁だって、援助する以上は経営を上向きに軌道修正させたいはずだ。

しかし、残念ながら、父の気持ちは椿がどれだけ説得したところで変えられない。昔気質で頑固な人だ。

「もしもみなせ屋にこういう着物を置くとしたら、客層はどうなると思う?」

仁が試すように尋ねてくる。

「品位が下がったと嫌がるお客様もいるでしょうね。父が伝統を大事にする気持ちもわかるんです」

高額、高品質であることがみなせ屋のブランドにもなっている。それを崩してもなお今の顧客をキープするのは並大抵のことではない。

「上質なものは上質なもの、カジュアルなものはカジュアルなものとして、一点一点こだわっているのだと、お客様ひとりひとりにご説明しなくちゃ。それと、若い世代に向けたマーケティングもかなり頑張っていかないと……SNSなどを使って……」

黙って店を開いていただけでは誰も来てくれない。

だが、今の時代はSNSなど情報を拡散するための便利なツールがある。火がつけば広がるのは一瞬だ。

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