身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
「短い同棲生活だったな」

仁は途中仕事をしたり、会見に出ていってしまったりと、常に一緒にいられたわけではないけれど、この二泊三日は特別な時間であり、ふたりの関係にも確実な変化があった。

今では椿は、仁と離れがたいとすら思う。

「そばにいられてよかった……」

寂しいなんて言って仁を困らせてはいけないと、ポジティブな言葉に変換して仁の袖を掴む。

仁は椿の腰に手を回し抱き寄せた。

「結婚すればいつでも一緒にいられる。だから、今は家族との時間を大切にした方がいい。一緒に暮らせるのは最後かもしれない」

「……はい」

寂しい、離れたくないと、椿の言いたいことを理解した上で気を遣ったようだった。

ふたりはホテルの地下駐車場に向かい、待機していたハイヤーの後部座席に揃って乗り込む。

「電話でみなせ屋を貸し切りにするって話していましたよね」

「ああ。椿の着物を仕立てようと思っている。もう二度と他人の着物など押し付けられないように」

菖蒲の着物を着せられていたことを相当根に持っているようだ。

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