身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
「きはだ色――レモンイエローのような黄色は持っているんですが、着る頻度は少ないかも……」

「椿はハッキリした色のほうがいいだろう。この黄色は?」

仁が手に取ったのは支子色――山吹色を淡く優しくしたような黄色だ。

しかも、柄は椿の大好きな花が描かれていた。

「朝顔……!」

青と紫の朝顔が全体に品よく描かれている。椿の目はこの反物に釘付けだ。

「朝顔が好きなのか? ……ああ、昔、学校の課題でも朝顔の柄に染めていたことがあったね」

覚えていてくれたことに驚いて仁を見上げると、にっこりと笑みを浮かべて見つめ返してくれた。

「仁さん、私、これがいいです」

「いいんじゃないかな。朝顔がかわいらしくて椿によく似合う」

さっそく鏡の前で合わせてもらう。母が椿の胸の前に反物を当ててくれた。

椿の顔色にもよく馴染む色で、華やかな朝顔が無理なく大人の女性に見せてくれる。

「仁さんは朝顔をかわいらしいと捉えるんですね。私は上品で涼やかなイメージでした」

「そうなのか? 私は丸くて華やかでかわいらしいと思っていたよ」

椿は仁をイメージし、仁は椿をイメージした――心の中で繋がれたようで椿は嬉しくなる。

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