身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
父が見立ててくれた帯は二種類。

ひとつは黒地にオレンジのふくら雀がアクセントになっている鮮やかな一本。もうひとつは光沢のある上品な灰色に、四季の吹き寄せ模様を施した、黄色に馴染みのよい一本。

椿は朝顔が綺麗に映える灰色の帯に即決する。

他にも仁は浅黄色のような緑みの青や、椿がこれまで着たことのなかった若草色の着物などを選んでくれた。

桃色以外自信を持てなかった椿だが、仁が選んでくれた色なら胸を張って着られる気がする。

「娘のためにわざわざありがとうございます」

父は正式に婚約が決まっただけでなく売上的にもほくほくで、満面の笑みを浮かべている。

「こちらこそ。今後も末永くよろしくお願い致します」

仁は仁で椿の両親に結婚の了承を得るという目的を達成できて、上々という表情だ。

後日、双方の両親を集め顔合わせをすることになった。挙式についても話が挙がりそうだ。

水無瀬家からの要望は白無垢と紋付き羽織袴。椿と仁も賛成で、おそらく都内の神社で神前式をすることになるだろう。

具体的になっていく結婚に、椿はドキドキと胸を高鳴らせた。


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