身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
仁は椿をリビングのソファに座らせると、自身はキッチンに向かった。

「シャンパンでかまわないか?」

グラスを手に取る仁を見て、椿は慌ててお腹を押さえた。今、アルコールを飲むのはとてもまずい。

「いえ、すぐに帰るつもりですのでアルコールは……!」

「そうか。じゃあ、コーヒーか紅茶か、どちらがいい?」

じゃあ紅茶を、と答えかけてハッとする。双方ともカフェインが含まれているので、やっぱりこれもまずい。

「ええっと……あの、いつものライムのお水をいただけますか?」

「? それでよければかまわないが」

仁は冷蔵庫を開き、薄切りのライムとミントが浮かんだミネラルウォーターのボトルを取り出す。椿はホッと息をつき、お腹をさすった。

「それで? 椿が慌てて俺のもとへやってきた理由は……まぁ、だいたい予想はつくんだが」

ミネラルウォーターの上にミントの葉がちょこんと浮かんだグラスをテーブルに置いて、仁は椿のすぐ横に座る。

椿は仁に向き直ると、意を決して尋ねた。

「仁さんは姉のことをまだ――」

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