身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
「本当は私のことを愛しているのに、好きでもない女と結婚させられる――仁が不憫だとは思わない?」

仁が椿を選んだのは本心なのだろうか。責任を取らなければと追い立てられた末の決断ではないか――椿の心に疑念が渦を巻く。

「仁も言っていたわ。妊娠なんて間違いだったらいいのにって」

「嘘よ」

仁がそんな軽薄なことを言うわけがない。きっとこれは菖蒲のはったりだ。

そう思いながらも、椿の指先は小刻みに震えている。

「嘘だと思うのなら、仁に直接聞いてみればいいわ。妊娠は間違いだったって正直に話してみたら? そうすれば彼の本心がわかる」

菖蒲は威圧的に言い放ち、二階へ上がっていってしまった。

仁が菖蒲との復縁を望んでいるのだとしたら。椿の妊娠を、本当は疎ましいと思っているのだとしたら。

言い知れぬ恐怖に襲われ、ひとりその場に呆然と佇んだ。



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