身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む～政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚～
――少し、人生がうまくいきすぎではないか。神がこんなにもあっさりと妻と子を自分に与えてくれるとは。

いや、現実的に言えば、椿の体が若く健康で着床しやすかったのだろう。

彼女が妊娠したいと思ってくれたからこその奇跡だ。

礼を言うべきは神ではなく、愛を受け入れ、今まさに育んでくれている椿にだ。

『嬉しい。嬉しいよ。椿、ありがとう』

思いっきり抱きしめてやりたいがそういうわけにもいかず、体に負担をかけないよう、特に腹部に衝撃が伝わらないようそっと抱きしめる。

椿はやっと安堵したようで、ふんわりとした笑みを浮かべてくれた。

こんなにも愛らしく健気な女性が妻となってくれることに、そして共に親となってくれることに、仁は心の底から感謝した。



その日のうちに菖蒲から電話がかかってきた。

これまでこちらからの電話を一切無視し続けてきたくせに、今さらなにを言うつもりかと気乗りしないまま電話を受ける。

『――ごめんなさい。あのときの私はどうかしていたの。マリッジブルーだったのよ』

まるで用意されていたかのような芝居がかった台詞に、仁は短く息をつく。こんな殊勝なことを口にするような女性ではなかったはずだが。

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