身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
第七章 想い、思い合って
仁の本心が知りたい。
日が経つごとに椿の中でそんな気持ちが膨らんでいった。
そっとお腹に手を当てて、そこにある小さな小さな息吹きに意識を持っていく。
お腹はまだほとんど膨れておらず、子どもがいるという実感はないに等しい。
たったひとつ、医師からもらったエコーの写真だけがその子の存在を証明していた。
黒と白がノイズのように入り混じった画像。静止画にするとわかりにくいが、病院のモニターで見たときには、椿にも心臓の拍動がはっきりとわかった。
宝物でもしまうかのように、写真を机の引き出しの一番上に入れておく。
この子がいる限り仁は、たとえ愛しているのが菖蒲だったとしても、椿との結婚を選んでくれるだろう――それが椿には心苦しくて仕方がなかった。
妊娠が間違いだったと告げたなら、仁は結婚相手に誰を選ぶのだろう。
もしも椿ではなく、菖蒲との結婚を望んだとしたら?
――私はこの子をどうしたらいいの?
子どもを堕ろす、そんな選択肢が頭をよぎり、ぶんぶんと頭を横に振った。それだけは避けなければならないと考えを巡らせる。
――ひとりで産み育てるとしたら……。