身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
当然、父と菖蒲の間で口論となるわけだが、頑固な父も気の強い菖蒲も折れるわけがなく、収拾がつかない。

「気苦労が耐えないってわけか」

「私ではどうすることもできないことが多くて……」

着物の種類を幅広く取り揃えることは賛成だ。

菖蒲の肩を持ちたいところではあるが、菖蒲は菖蒲で売り方が強引で、あきらかに似合っていないものを似合うと調子よくごまかして売りつけたりするから一概に肯定できない。

「……そういえば、椿はもともと和装のデザインや着物の工房に興味があったんだろう? みなせ屋にずっといる気はないんじゃないのか?」

「え?」

先日も菖蒲に指摘されたことを口にされ、椿は動揺する。

菖蒲が帰ってきた今、椿が無理にみなせ屋に残る必要はない。

しかし、一度はみなせ屋に骨を埋めようと決めた身。そう簡単に決意が変わるわけもない。

「もちろん、興味はありますが……今のお仕事にもやりがいを感じていますから」

「みなせ屋にいて満足できるのか? 今後も店の方針は父親が決めるんだろう。菖蒲も帰ってきた。君が店を自由に切り盛りできるようになるのは当分後……最悪、そんな日は来ないかもしれない」

「それは……」

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