身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
「堂々と受け取ってくれていい。これは投資だ。椿なら必ず、有益なことに使ってくれると信じている」
ごくりと息を呑んで、小切手を見つめる。こんな大金を預けられ、指先が震えてしまう。
しかし、このお金があればひとりでも子どもを産むことができる。
「それと、菖蒲のように突然姿を消すのもナシだからな」
念を押され椿はドキリとした。まさに姿を消してしまおうと企んでいたところだった。出産のことを仁に知られるわけにはいかない。
「明日、君のご両親に会って俺からも口添えする。婚約を延期するにしても破棄するにしても、ご両親には説明しなければ」
「……はい」
親への説明を仁がしてくれるというなら助かる。きっと仁ならうまいこと説得してくれるはずだ。
「お金はいつか必ずお返しします」
「いらないよ。投資だと言っただろう」
「いえ。返させてください。……少し、時間はかかるかもしれませんが」
「出世払いか。なら、俺は椿が夢を叶えて返しに来てくれるのを待っている」
椿はペコリと一礼して、仁の書斎を出る。
仁は家まで送ると言ってくれたが、もう時間が遅いからと断った。
ごくりと息を呑んで、小切手を見つめる。こんな大金を預けられ、指先が震えてしまう。
しかし、このお金があればひとりでも子どもを産むことができる。
「それと、菖蒲のように突然姿を消すのもナシだからな」
念を押され椿はドキリとした。まさに姿を消してしまおうと企んでいたところだった。出産のことを仁に知られるわけにはいかない。
「明日、君のご両親に会って俺からも口添えする。婚約を延期するにしても破棄するにしても、ご両親には説明しなければ」
「……はい」
親への説明を仁がしてくれるというなら助かる。きっと仁ならうまいこと説得してくれるはずだ。
「お金はいつか必ずお返しします」
「いらないよ。投資だと言っただろう」
「いえ。返させてください。……少し、時間はかかるかもしれませんが」
「出世払いか。なら、俺は椿が夢を叶えて返しに来てくれるのを待っている」
椿はペコリと一礼して、仁の書斎を出る。
仁は家まで送ると言ってくれたが、もう時間が遅いからと断った。