身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
椿は確かにそう言っていたはずなのに、なぜそんな写真を持っているのか。答えは簡単だ。椿は嘘をついている。

――おそらく、自分の存在が俺の邪魔になると考えて……。

ようやく思い当たった仁は、自分がしてしまったことを振り返り蒼白になる。

「こんな時間に申し訳ありませんが、そちらに伺ってもよろしいでしょうか」

『ええ……お待ちしています……』

仁はすぐさま車を出して椿の実家に向かう。

実家の前に車を停めると、その音を聞きつけて玄関から椿の母親が飛び出してきた。

玄関の奥にはゆったりとした寝衣に身を包んだ菖蒲が、腕を組み不貞腐れたような顔で立っている。

「こんな時間にお呼び立てして申し訳ありません」

「いえ、こちらこそ。椿さんをきちんと家まで送り届けるべきでした」

心底後悔を混じらせ謝罪すると、椿の母親は震える手で自身の携帯端末を差し出した。

「椿と連絡が取れないんです。電話もメールもしたのですが返事がなくて。あの子はどこへ行ってしまったんでしょうか……?」

普段は呉服屋の女将らしい凛とした夫人なのだが、今は気が動転しているようだ。椿が妊娠しているかもしれないということもあって心配なのだろう。

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