身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
第八章 ありのままが美しい
「ふぅ……」
タクシーの運転手に案内され辿り着いたホテルで、なんとか部屋を押さえることができた椿は、ふかふかのベッドに腰を据えて息をついた。
「思っていたより、ずっと高いホテルに案内されちゃった……」
連れて来られたのは立派なシティホテル。
確かに、シティホテルの中でいえば、そこまで高いランクではないようだが、広々とした部屋に美しい眺望、品のいい調度品、足が伸ばせるほど大きな客室付きバスルームは、椿としては完全に贅沢の部類に入るものだった。
ビジネスホテルなどを思い浮かべながら『できるだけ安いところでお願いします』と頼んだつもりだったのだが。
椿が上品な着物を着ていたせいか、運転手はそれなりの場所に案内しなければと気を遣ったようだ。
いや、そもそも仁のマンションからタクシーを呼ぶような客は、そういう客ばかりであるに違いない。
「次からは、ちゃんと『安いビジネスホテルで』ってお願いしなきゃ」
手痛い出費だった。ひとつ学んだ椿である。
「こんなお金の使い方してたら、すぐになくなっちゃう」
今後は節約していかなくては。
まずはひと晩宿泊して、明日の朝、新幹線に乗ろうと計画する。