身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
「……探してくれたんですか?」

「身重の妻が、夫になんの断りもなく遠出をするつもりだったようだから」

身重という言葉にドキリとして、椿は慌てて仁の胸に手をつき体を離した。

なぜそのことを知っているのか。自分以外は誰も知らないはずなのに。

なにも言葉を返せずにいると、仁は眼差しを鋭くして揺るぎない口調で言った。

「前言撤回だ。なにがあっても君と結婚する。君とお腹の子を幸せにできるのは、俺しかいないからな」

なぜかわからないけれど妊娠がバレて、仁は責任を取るべく椿のもとにやってきたようだ。

その申し出は椿にとってみれば嬉しいけれど、仁の気持ちをないがしろにしているのだと思うと悲しくもあった。

彼を縛り付けてしまったことに対する申し訳なさで胸がいっぱいになる。

「でもっ……仁さんが本当に結婚したいのは……」

姉ではないのか。その質問を先回りした仁が、椿を抱く手に力を込める。

「なにか勘違いしているようだな、椿」

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