身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
椿は部屋を飛び出すと、自室にふたりを招き入れ、学校の課題で作った染布を誇らしげに広げた。
授業の数より染め物の数が多いのは、椿が趣味同然で染色の教室を使わせてもらっているからだ。
絞り染めや型染めなど様々ある中で、仁が手に取ったのは、藍と白で花柄を表現した大胆な絞り染め。
「これは?」
「半幅帯と言って、小紋や浴衣のようなカジュアルなお着物に合わせる帯です。この前授業で染めたんですが、この白い丸柄が――」
まるで朝顔のようでしょう? と言いかけて椿は口を噤んだ。
朝顔は椿にとって仁の象徴。涼やかで凛としていて、華やかで気高く、上品で優しい。仁を見ていると朝顔の花を思い起こしてしまう。
――いや、逆だ。朝顔を見ては仁のことを思い出すのだろう。だからこそ、自分はこの絞りで朝顔を表現しようとした。憧れを具現化させるかのごとく。
姉の恋人相手になにを考えているのだろうと、自らのやましさに口が開かなくなった。
こんなことを菖蒲に悟られたら、嫌がられること請け合いだ。戸惑っていると、仁の方から口を開いた。
「花のようで美しいな。桔梗……いや、違うな。朝顔のようだ」
授業の数より染め物の数が多いのは、椿が趣味同然で染色の教室を使わせてもらっているからだ。
絞り染めや型染めなど様々ある中で、仁が手に取ったのは、藍と白で花柄を表現した大胆な絞り染め。
「これは?」
「半幅帯と言って、小紋や浴衣のようなカジュアルなお着物に合わせる帯です。この前授業で染めたんですが、この白い丸柄が――」
まるで朝顔のようでしょう? と言いかけて椿は口を噤んだ。
朝顔は椿にとって仁の象徴。涼やかで凛としていて、華やかで気高く、上品で優しい。仁を見ていると朝顔の花を思い起こしてしまう。
――いや、逆だ。朝顔を見ては仁のことを思い出すのだろう。だからこそ、自分はこの絞りで朝顔を表現しようとした。憧れを具現化させるかのごとく。
姉の恋人相手になにを考えているのだろうと、自らのやましさに口が開かなくなった。
こんなことを菖蒲に悟られたら、嫌がられること請け合いだ。戸惑っていると、仁の方から口を開いた。
「花のようで美しいな。桔梗……いや、違うな。朝顔のようだ」