身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
「紆余曲折ありましたが、今では純粋に椿さんを愛し、幸せにしたいと考えています。どうか私に椿さんをお任せください」

これはまだ不安そうな顔をしていた母に向けた言葉のようだった。

母は父の決めたことに反論できるような気の強い人ではないけれど、娘たちの未来を誰よりも案じていたに違いない。

「椿が心から結婚したいと、そう言ってくれるのであれば、私たちに憂うことはなにもありません」

そう言ってくれた母を見て、椿はほっと安堵する。

椿の妊娠は公然のものとなり、両親への承諾も得られた。

仁の両親にも挨拶をしに行かなければならないが、気負わなくていいと仁は言う。

俺が選んだ妻ならば誰も文句は言わないと不遜なことを言って、椿を安心させてくれた。



その日の夜。翌日に備え両親は早々と就寝。椿は自室でパソコンを開き調べものをしていたが、お茶を煎れようと階段を降りた。

キッチンに明かりがついていることに気づき椿が覗くと、菖蒲がダイニングテーブルに座り携帯端末をいじっていた。

やかんが火にかけられている。どうやらお湯が切れたらしい。

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