身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
菖蒲は椿の姿に気づくとちらりと一瞥して、すぐに携帯端末に視線を戻した。

「……もう十二時なんだけど。こんな時間まで起きてていいわけ? 妊娠してるんでしょ?」

「あ、うん……妊娠中に気をつけることとか、よくわからなくて。調べてたらこんな時間になっちゃった」

「そういうの本末転倒って言うのよ」

菖蒲が呆れた声をあげる。椿が苦笑しながら急須を手に取ると、今度こそ菖蒲が顔を上げた。

「……椿、あんたさ、ナチュラルに緑茶飲もうとしてるけどいいわけ? カフェインとか」

「え……ああ!」

コーヒーや紅茶は警戒していたけれど、緑茶はノーマークだった。緑茶にもカフェインが含まれるんだっけ?と椿は先ほど見た記事を思い出す。

「お姉ちゃん、詳しいのね」

「妊娠した友達がいたのよ。あんた、マグロとかも食べないように気をつけなさいよ、よく夕飯に出るでしょ。食べられないものはあらかじめお母さんに言っておきな。お母さんは自分が妊娠したときのことなんて、もう覚えてないだろうから」

「うん、わかった……」

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