身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
仁は端に立てかけられているメニュー表を手に取り、素早く目を通すと、やってきた店員にずんだの和風パフェとずんだショートケーキを注文した。

ほかに頼みたいものは?と尋ねられたが、もうそれだけ頼めば充分だろう、椿はぶるぶると首を横に振る。

やがてやってきたパフェは俗にいう金魚鉢パフェ。軽く四人前はありそうで、ふたりは唖然とした。

「……椿、以前は何人でこれを食べた?」

「そのときは、ずんだのミニパルフェだったのでひとりで食べられたんですが……。仁さんは知ってて頼んだんじゃないんですか?」

「写真まで見ていなかった。他に比べて妙に値が張るなとは思っていたんだが……」

意外と抜けている仁に、椿はプッと吹き出した。

仁はそんな椿を見て情けなく眉を下げると、つられてくつくつと笑い出す。

「お互い残さない主義だったよな? 食べるぞ」

「えっ……本気です!?」

「これが今日の夕飯だと思え」

仁は柄の長いスプーンにたんまりとずんだアイスを載せて、椿の口に放り込む。

「冷たっ……!」

椅子の上で跳ね上がった椿を見て、仁はニヤリと微笑むと、求肥や白玉、ずんだムースなど、ずっしりとしたものをどんどん椿の口に放り込んでいく。
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