身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
「祖父は君の姉に世継ぎを産んでもらおうと期待していたんだが。残念だ」
京蕗家当主は持病が悪化し、床に伏せっているという。
孫の結婚と世継ぎの誕生に最後の希望を託していたのだが、最悪の形で裏切ることになってしまった。
「帰って父親に伝えなさい。相応の報復を覚悟するようにと」
「待ってください!」
京蕗家に目をつけられては、信用商売のみなせ屋はもうおしまいである。いや、そもそも援助を差し止められた時点で未来はない。
椿は床に額が着くほど深々と頭を下げ、想定していた最悪のケースへと対応を切り変える。
椿がここに来た理由はもうひとつある。父から託された言葉を思い出し、きゅっと唇をかみしめた。
――『いいか、椿。京蕗さんがどうしても許さないと言うのなら、こう言いなさい』――
「……私が姉の代わりに――」
震えながら記憶の中の父親の言葉を反芻する。
「子どもを産みます」
仁の目元がひくりと引きつる。
椿は、菖蒲と仁が仲睦まじい恋仲であったことを知っている。
菖蒲を心から愛していた仁が、代わりにと妹を差し出されたところで納得するはずがない。仁の怒りを煽るだけだ。
――こんなことを言ったって、許してもらえるわけがない……。
京蕗家当主は持病が悪化し、床に伏せっているという。
孫の結婚と世継ぎの誕生に最後の希望を託していたのだが、最悪の形で裏切ることになってしまった。
「帰って父親に伝えなさい。相応の報復を覚悟するようにと」
「待ってください!」
京蕗家に目をつけられては、信用商売のみなせ屋はもうおしまいである。いや、そもそも援助を差し止められた時点で未来はない。
椿は床に額が着くほど深々と頭を下げ、想定していた最悪のケースへと対応を切り変える。
椿がここに来た理由はもうひとつある。父から託された言葉を思い出し、きゅっと唇をかみしめた。
――『いいか、椿。京蕗さんがどうしても許さないと言うのなら、こう言いなさい』――
「……私が姉の代わりに――」
震えながら記憶の中の父親の言葉を反芻する。
「子どもを産みます」
仁の目元がひくりと引きつる。
椿は、菖蒲と仁が仲睦まじい恋仲であったことを知っている。
菖蒲を心から愛していた仁が、代わりにと妹を差し出されたところで納得するはずがない。仁の怒りを煽るだけだ。
――こんなことを言ったって、許してもらえるわけがない……。