身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
「自宅へ。買った着物をしまいたい。できれば君に頼みたいんだが」

「お着物の収納ですね! お任せください」

仁の着物はすでに別のハイヤーが運搬済みで、マンションのコンシェルジュが預かってくれているそうだ。

マンションに着いたふたりはコンシェルジュの手を借り、五セット分の着物や和装小物を部屋に運び込んだ。

仁のクローゼットルームには、着物を収納するために用意した桐の衣装ケースが置かれている。

さっそくしまおうとする椿だったが、仁が手慣れた様子でささっと片付けてしまったから、手伝うことはほとんどなかった。

「私、来なくてもよかったんじゃ……」

「いいんだ。あれはただの口実だから」

「口実?」

目をキョトンとさせながら椿は仁のあとについてリビングへ向かう。

「ここからは大人のデートをしよう。いい大人がパフェを食べて終わりじゃ情けないだろう」

「オトナのデート?」

首を傾げる椿だったが、「酒は飲めるか?」と尋ねられ、晩酌に付き合えということだと理解する。

「飲めます。……あ、ごめんなさい、妊娠はまだしてな――」

「だからいちいち謝罪するなと言っているだろう――ワインでかまわないか?」

椿がこくりと頷くと、仁はテキパキと晩酌の準備を進めていった。
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