身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
「あの日から椿はずっと俺に怯えている。怖かったんだろう?」
答えることができなかったのは、あの日、紳士だったはずの仁が一瞬だけ恐ろしい獣に見えてしまったから。
それでもベッドの中では優しく、今もこうして寄り添ってくれている。
あのときの仁をどう捉えたらいいのかわからない。
「丁寧に扱ってくださったことは知っています。……ただ、あなたのことがよくわからなくもなりました」
女性として愛される喜びを教えてもらえた夜、心地のいい一夜だった。
だが、同時に彼の非情な一面――愛してもいない女性と簡単に体を重ねられる残酷さも知ることになった。
「俺の態度が以前とは違うからか?」
「……それもあります」
以前のように気軽に話しかけられなくなったのは、〝婚約者の妹〟として接してくれていたときと態度がまるで違うから。
とにかくあの夜は、椿が見たことのない仁の一面をたくさん知ることになった。
「昔のように呼んでほしいか? まるで子どもをあやすように〝椿ちゃん、かわいいね〟と」
唐突に優しい声を出され、グラスを持つ手が震える。
記憶の中の温厚だった仁が蘇ってきて、椿の心を揺さぶった。
「あのときはいわば他人だったからな。人当たりのいい顔をしていた。まぁ、それが好きというなら善処はするが」
答えることができなかったのは、あの日、紳士だったはずの仁が一瞬だけ恐ろしい獣に見えてしまったから。
それでもベッドの中では優しく、今もこうして寄り添ってくれている。
あのときの仁をどう捉えたらいいのかわからない。
「丁寧に扱ってくださったことは知っています。……ただ、あなたのことがよくわからなくもなりました」
女性として愛される喜びを教えてもらえた夜、心地のいい一夜だった。
だが、同時に彼の非情な一面――愛してもいない女性と簡単に体を重ねられる残酷さも知ることになった。
「俺の態度が以前とは違うからか?」
「……それもあります」
以前のように気軽に話しかけられなくなったのは、〝婚約者の妹〟として接してくれていたときと態度がまるで違うから。
とにかくあの夜は、椿が見たことのない仁の一面をたくさん知ることになった。
「昔のように呼んでほしいか? まるで子どもをあやすように〝椿ちゃん、かわいいね〟と」
唐突に優しい声を出され、グラスを持つ手が震える。
記憶の中の温厚だった仁が蘇ってきて、椿の心を揺さぶった。
「あのときはいわば他人だったからな。人当たりのいい顔をしていた。まぁ、それが好きというなら善処はするが」