身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
「今夜は君から誘ってほしい」

熱い眼差しを向けられ、鼓動が速くなる。

仁は手をソファの背もたれに回したかと思うと、椿の方へ身を乗り出してきた。

「初めて会ったときの君は、純粋に夢を追いかけて輝いていた。あのときの君のままなら、きっと俺は後ろ暗くて抱けなかったよ」

体がゆっくりとうしろへ倒れていき、帯がソファの座面にあたった。

仁の大きな手のひらが椿の頭を受け止めてくれる。

「だが、もう椿は大人なんだろう。おねだりも上手にできるよな」

「おねだり……?」

「『愛して』、『欲しい』とかわいくねだるんだ。男をうまく嘘で転がしてみせろよ」

偽りの言葉で求められたところで、それは心に響くのか。その『愛して』が嘘だとわかっていて、それでも転がってくれるのだろうか?

それが大人の楽しみ方であるというのなら、よくわからないなと椿は思った。

「……嘘はつきたくありません。私は――」

「そういう堅苦しい話をしたいわけじゃない。同意がほしいだけだ」

仁は目を細め、椿をなだめるように笑みを浮かべる。

椿はなんとなく仁の言いたいことを理解した。
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