身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
第三章 抱き続けた理由
仁と食事をともにした後、彼の家へ連れ帰られ体を重ねる――そんなやり取りを幾度か繰り返した。
いつだって仁は頼もしく椿をリードし、丁寧に抱いてくれた。
夜のお相手が下手な椿に、仁は手取り足取り教えてくれる。
なにより、彼の体を知り素肌に触れられることが椿は嬉しかった。
そこはかとなく湧き上がる、大切にされているという実感。
自分は姉の身代わりなどではなく本物の恋人である、そう錯覚してしまいそうなほどに。
――仁さんは少しずつ私に心を開いてくれているのかもしれない……。
自惚れかもしれないが、そうであると願いたかった。
やはり仁は憧れていたままの、優しくて誠実な人――そんな期待が膨らんでくる。
椿の心にはもう、結婚を拒む気持ちなど欠片もなかった。
二カ月が経ち、季節は六月。
着物の世界でも衣替えのシーズンで、これまで着ていた袷から裏地のない単衣へと切り替える時期だ。
風通しのよくなった着物で出勤した椿は、夕方、早めに店を上がらせてもらい婦人科に向かった。
先日、ブライダルチェックを受けたのだ。妊娠可能な体であることを証明したかった。