身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
第四章 最も愛らしく美しい人
一階へ向かうエレベーターの中、背後にある鏡に自分の顔を映した椿は、うっと眉を寄せた。
涙でアイメイクがボロボロだ。慌ててクラッチバックからティッシュを取り出し、崩れたメイクを拭き取る。
若干マシにはなったものの、目の周りが不自然に青く染まっている。
正面玄関にいた報道陣は椿のことをまだ覚えているだろう。つい先ほどマンションに入っていった女性が、間を置かずメイクをボロボロにして戻ってきたら、あきらかに不審だ。
このまま正面玄関を出るのは躊躇われ、咄嗟に地下一階のボタンを押した。駐車場の出口なら報道陣もいないはずだ。
シンと静まり返る地下を抜け坂道を上り、車に気をつけながら地上へ出ると、案の定そこに報道陣の姿はなく、椿は安心して歩道に出た。
――しかし。
「すみません! 少々お話伺えますか!?」
正面に停まっていた車からリポーターが降りてきて、こちらに駆け寄ってくる。
同時に、建物の陰にも数組隠れていたようで、椿は慌てて引き返そうとしたが、あっという間に囲まれてしまった。
「もしかして、京蕗さんと以前ご婚約されていた方ですか?」
「砂羽秋乃さんとの交際はご存知でしたか!?」
涙でアイメイクがボロボロだ。慌ててクラッチバックからティッシュを取り出し、崩れたメイクを拭き取る。
若干マシにはなったものの、目の周りが不自然に青く染まっている。
正面玄関にいた報道陣は椿のことをまだ覚えているだろう。つい先ほどマンションに入っていった女性が、間を置かずメイクをボロボロにして戻ってきたら、あきらかに不審だ。
このまま正面玄関を出るのは躊躇われ、咄嗟に地下一階のボタンを押した。駐車場の出口なら報道陣もいないはずだ。
シンと静まり返る地下を抜け坂道を上り、車に気をつけながら地上へ出ると、案の定そこに報道陣の姿はなく、椿は安心して歩道に出た。
――しかし。
「すみません! 少々お話伺えますか!?」
正面に停まっていた車からリポーターが降りてきて、こちらに駆け寄ってくる。
同時に、建物の陰にも数組隠れていたようで、椿は慌てて引き返そうとしたが、あっという間に囲まれてしまった。
「もしかして、京蕗さんと以前ご婚約されていた方ですか?」
「砂羽秋乃さんとの交際はご存知でしたか!?」