過保護な次期社長の甘い罠〜はじめてを、奪われました〜

prologue



「おう、デカくなったなぁ、ちびすけ」



高級チョコレートメーカー"ラピス"の最終面接。

何度経験しても慣れないこの緊張を、手のひらに書いた人という文字と一緒になんとか飲み込んで。

ノックをして失礼します、とその部屋に一歩足を踏み入れた瞬間に投げられたその言葉。

驚きに固まっている私にその人は、イタズラが成功した子供みたいな顔で笑った。


「おいちびすけ。オレのこと、忘れたか?」


にっ、と口角を上げ切長の瞳を細めて真っ直ぐに私を見つめるその人を……私は知っている。


脳裏に浮かぶのは彼の高校の時の制服姿。

目の前にいる彼は高校生だった頃の面影は残しているけれど、重ねた年月だとか、積んできた経験に裏打ちされた自信だとかがプラスされて、あの頃よりも格段に男らしく、凛々しくなっていて。

でも、"ちびすけ"と私を呼ぶその声は、記憶の中よりも少し渋みを増したように感じるけれど、揶揄うように弾んだ声色は今も全然変わっていない。


「…………大我…………っ⁉︎」



ーー南条 大我(ナンジョウ タイガ)。

彼は昔近所に住んでいた高校生で、当時小学生だった私にとってヒーローだった人ーー。
< 1 / 180 >

この作品をシェア

pagetop