過保護な次期社長の甘い罠〜はじめてを、奪われました〜
"……んなっ⁉︎"

"羽衣ちゃん、オレね、羽衣ちゃんのこと大好きだよ?"

"……?うん、羽衣も遥くん大好き!"

"……っおいっ、遥っ、ふざけんなっ!羽衣には手ぇ出すんじゃねえっ!"

オレは慌てて遥から羽衣をべりっと引き剥がす。

守備範囲の広い遥なら、マジで羽衣に手を出しかねない……。

"はははっ!……これは面白い……"

羽衣を再び背中に匿いながら、ニヤニヤする遥を鋭く睨んでいると、

"……勝手にやってろ。もう行くわ。またな、羽衣坊"

"あっ、うん、ばいばい!"

そんなオレたちを呆れた顔で一瞥して竜は去って行った。



……思えばたぶんあの頃にはもう、羽衣はオレにとって特別だった。遥の言う通り、無自覚ではあったが。



そして避けられない運命とはいえ、親父の会社を継ぐことに対して頑なだったオレの気持ちを溶かしたのも羽衣だった。


"大我、こわい、たすけて!"

仲間とたむろしていたオレのスマホに知らない番号から着信があったのは、すっかり日が暮れるのが早くなった10月初めの夕方6時過ぎ。オレが高2の時だった。

普段なら無視するところだが、この時ばかりは虫の知らせというか、変な胸騒ぎがして電話を取ってみれば、泣きながら助けを求める羽衣で。

あの時ほど自分の勘に感謝したことはない。
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