過保護な次期社長の甘い罠〜はじめてを、奪われました〜
今日もそれをやったところだったが、羽衣から電話が来た時一緒だった遥が"これ羽衣ちゃんに"と寄越して来たものだった。

"なあに?これ?"

きょとんとしている羽衣にチョコだと言うと、

"でも夜ご飯の前にお菓子食べちゃダメってお母さんが……"

チョコの箱とオレの顔をちらちら交互に見ながら戸惑う羽衣が可愛くて。

"ははっ!お前は真面目だな。たまにはちょっとくらいいいんだよ。オレが許す。ほら、食え"

箱を開けてやると、宝石みたいと目をビー玉みたいにキラキラさせて喜ぶ羽衣。

その口にひと口放り込んでやると、

「……なにこれ……!こんなキレイでおいしいチョコレート、羽衣うまれてはじめてたべた……!」

大きな瞳をさらにくりくりキラキラさせて幸せそうな笑みを浮かべるから、オレは一瞬驚いて吹き出した。

"……ふはっ、大げさ"

"ぜんぜん大げさじゃないよ⁉︎大我もたべてみて⁉︎"

"いーよ。そんな気に入ったんならちびすけが全部食え"

"ダメ!大我もたべるの!ほら!"

羽衣がオレの口に一粒放り込んだ。

何年か振りに口にした親父のところのチョコレート。

"ね⁉︎おいしいでしょ⁉︎ほっぺたおちそうでしょ⁉︎"

そう言って屈託のない顔で羽衣が嬉しそうに笑うから。

"……ああ"

オレは素直にそう答えていた。
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