過保護な次期社長の甘い罠〜はじめてを、奪われました〜
羽衣が高校のクラス会に行くと言った時。

"飲み過ぎるなよ?" "1人で帰れるか?"と心配するオレを、

"私もう小学生じゃないんですよ?"

とくすくす笑うあいつは、オレが小学生じゃねえから心配してるんだってことを、全然分かっちゃいない。

余裕ぶって家着いたら連絡しろなんて言ってみたものの、結局会食を切り上げて羽衣を迎えに行って周りを牽制しちまうあたり、余裕なんて全然なかった。

ここまで来て誰かに取られるとか、我慢ならねえし、まじで笑えねえんだよ。


そんな羽衣が、実は今まで誰とも付き合ったことがなくて、しかもオレたちが理想の男だったと、酒で潤んだ瞳と火照った頬をさらに真っ赤にして言うもんだからもう堪らない。


"羽衣"


嬉しさと愛おしさが込み上げて来て、オレは本能のままにあいつの唇を奪った。



"ちびじゃなくなったら名前で呼んでやる"



その約束を、忘れたわけじゃない。

だけどオレがあいつと再会してからもずっと"ちびすけ"と呼んでいた理由はただ一つ。

名前で呼んだら最後、あいつへの気持ちが抑えられる自信がなかったから。

いわば"ちびすけ"呼びは、オレの中で一種のブレーキみたいなもんだった。

だがもう抑える必要はない。
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