過保護な次期社長の甘い罠〜はじめてを、奪われました〜
そんな中、雑誌の取材で来社した紬出版の編集者があのとしだったと判明したのは、取材の後だった。

そして蘇る、あの日の記憶。

6年前帰省した時に見掛けた羽衣の隣にいた男、あれはこいつだった。間違いない。

クラス会の日、羽衣を迎えに行った時も確か近くにいたな……。


"大我さん、花里と半年前から一緒に暮らしてるって聞きましたけど、まだあいつの彼氏ではないんですか?"

広報部の奴らとカメラマンを先に退出させて、オレと遥ととしの3人だけになった会議室でとしが問う。

"ははっ、言われちゃってるよ?大我"

遥が愉快そうに笑う。

"……うるせえ"

"一応聞きますけど、大我さんは好きってことでいいんですよね?花里のこと"

"ああ"

"でも花里は大我さんに他に好きな人?彼女?がいると思ってるみたいですけど"

"ああ?どういうことだ"

"大我さんの好きは、ここに込めた気持ちは、あいつには全く伝わってないってことですよ"

そう言って右手に持つ小型レコーダーを指差す。

さっきまでの取材で使われていた、としの商売道具だ。

"大我さん。『好きの伝え方、間違えないで下さい』よ"

としがニヤリと悪戯っぽく笑う。
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