過保護な次期社長の甘い罠〜はじめてを、奪われました〜

いつも飄々としている遥さんも、坂崎さんの変わり様にはさすがに驚いてたな。

まさかあんなところで2人が再会するとは思ってもみなかったけど。

思わずふふ、と笑みを浮かべながら、坂崎さんに言われた通り会社前の路肩に停められている黒いレクサスに向かってキーボタンを押すと、カチャ、とロックが解除されたので、お邪魔します、と誰にともなく断りを入れ先に乗り込ませてもらう。

その瞬間、大我の車とは違う坂崎さんと同じ柑橘系の香りがふわっと香って、ただそれだけのことで大我が恋しくなってしまった自分に苦い笑いが込み上げる。

頭では諦めなきゃと分かっているのに、心がどうしても求めてしまう。



私にとって、大我という存在は昔から特別だった。

父親のいなかった私にとって大我は1番身近な存在の異性で。
 
強くてかっこよくて、怖い顔してるくせに優しくて。

私がピンチの時にはいつも駆けつけてくれる、ちょっと過保護なヒーロー。

まだ恋なんて知らなかったあの頃の私は、そんな大我に対して感じる誇らしいような、恥ずかしいような、みんなに自慢して歩きたいような、それでいて自分の中にだけ閉じ込めておきたいような、そんな矛盾する気持ちの正体なんて分かるはずもなかったけれど。

今なら分かる。

あの気持ちこそが恋だったんだと。
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