過保護な次期社長の甘い罠〜はじめてを、奪われました〜

あの頃大我に恋をして。再会してまた大我に恋をした。

22年間生きてきて私が恋をした相手は大我だけ。

だから私はこの恋心の消し方が分からない。

どうすれば消せる?

どうすれば大我は私の中から出て行ってくれる?

坂崎さんは知っているだろうか、この気持ちの消し方を。

知っているならどうか教えて欲しい………。



「……ふはっ!羽衣坊、なんで後部座席に乗ってんの。どこ行ったかと思ったわ」


どのくらいぼーっとしていただろう。たぶん5分とか10分とか、そのくらい。

気づいたら相良さんと話を終えたらしい坂崎さんが助手席のドアを開けて後ろにいる私を覗き込み、吹き出していた。

「こういう時はそっちじゃないでしょ、普通。はい、こっち来て?」

後部座席のドアを開き、私を助手席へ座るように促す。

「や、でも……」

「あのな、羽衣坊。助手席はそんな大層なもんじゃないの。いいからこっち座って?」

遠慮する私に坂崎さんが、「あんまり長く停めてらんねーからさ、ほら早く」と急かすから、私は渋々助手席へ移動した。
< 129 / 180 >

この作品をシェア

pagetop