過保護な次期社長の甘い罠〜はじめてを、奪われました〜
「羽衣坊、ちゃんと成人してんだよな?なんか罪悪感がすげえ……」

すると坂崎さんが向かいの席で口元を押さえ何ともいえない表情をする。

「ふふ、してますよ、もう22ですから。……前に大我も同じこと言ってました、私とはじめて一緒にお酒飲んだ時」

……ああ、言ったそばからまた大我のことを思い出してしまった。

あれは上京して来てからはじめて大我の晩酌に付き合った時。

今の坂崎さんと全く同じで、

"ちびすけに酒飲ませるとか、罪悪感しかねえ……"

そう言って苦笑いしていたっけ。


「ははっ!オレらの中では小学生の時のイメージが強いからな、羽衣坊は」

「……もう大人ですよ、私は」

お通しを見つめながら、複雑な気持ちでちょっと拗ねたようにそう言えば、

「分かってるよ?ちゃんと」

思いのほか優しい声が耳に届いたから、ふ、と顔を上げると、やっぱり優しい眼差しで私を見つめている坂崎さんと目が合い、頭をガシガシされた。

そのタイミングで頼んでいた料理がいくつか運ばれてきて、

「さっ、羽衣坊、いっぱい食え。ほれ」

坂崎さんは徐に私の口につくねを突っ込んだ。

「ふぐっ……っ!」

「美味いか?」

一生懸命もぐもぐして飲み込み、美味しいですけど急に突っ込まないで下さい……と抗議すれば、坂崎さんがけらけらと面白そうに笑うから、私も釣られて笑ってしまう。
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