過保護な次期社長の甘い罠〜はじめてを、奪われました〜
「としが今日が発売日だから必ず買って読めって。渚さんも、お昼行って来ていいから早く読んでおいでって……」

「そうか」

「じゃあちょうどいいし、大我もお昼にしたら?羽衣ちゃんの分も用意するから、ここで2人で食べなよ。しばらくは電話も回さないように言っておくから」

「ああ、そうだな、頼む」

軽く頷いて優しく微笑み、相良さんは専務室を出て行く。

大我と2人きりになった部屋で、震える胸を無意識に押さえながら私は口を開いた。

「大我、ここに書かれてるのって……」

「ああ、お前のことだ。…覚えてるか?昔お前が泣いてオレに電話掛けて来た時のこと」

はっとしてこくん、と頷く。

きっとこの前夢にも見た、あの時のことだ。

まあ座れよ、そう言って大我はデスクの前に置かれているダークブラウンの高級そうなソファーに私を促す。

「あの頃のオレは自分の意志とは関係なく将来は親父の会社を継ぐことが決められていて、それに反発して荒れていた時期だった。でもそんな時、うちのチョコを食ったお前があんまり目を輝かせて嬉しそうに笑うから。お前にそんな顔させられるチョコ作ってる親父の会社も案外悪くねえなって、あの時はじめてそう思えたんだ」

私の隣に座った大我が視線を少し上へ向けて、懐かしそうに目を細めた。
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