過保護な次期社長の甘い罠〜はじめてを、奪われました〜
「あれがあったからオレは今自分の意志でここにいる。あの時のお前の笑顔がオレの原動力で、オレの原点なんだ」
そう言って柔らかい眼差しを私へ向ける。
うそ……。
今度は私が驚きで目を見開く番だった。
胸がいっぱいで言葉にならない。
まさかあの日のことを大我も覚えていて、しかもそんな風に大我に影響を与えていたなんて。
だけど私にとってもあの日の出来事は特別だったんだよ、大我。
だって、あの日宝石のようにキレイで美味しいチョコレートに出会っていなかったら、私はきっと今、ここにはいなかったから。
私がここで働きたいと思った最初のきっかけは、間違いなくあの日のチョコレートだった。
「……なあ、羽衣。うちを受ける時履歴書に書いた志望動機、覚えてるか?」
「……え?」
「オレは覚えてる。『御社のチョコレートは、子供の時から私にとって特別なご褒美チョコレートでした。1番最初に見た時、食べた時の感動は今でも忘れられません。私の思い出の中にはいつも御社のチョコレートがあります。』って、書いてあった」
「なんでそんなに詳しく覚えてるんですか……」
すらすら唱える大我にびっくりする。
私だってそんな一言一句覚えていないのに。
それに改めて口に出して言われるとなんだか恥ずかしい。