過保護な次期社長の甘い罠〜はじめてを、奪われました〜



「よっ、花里!」

「……………高木くん?」

1時間くらい経った頃だろうか、ほろ酔い気分でお手洗いに立ち、戻る途中でポン、と肩を叩かれた。

振り返ってじぃっと顔を見て、あ、たぶん3年生の時隣の席だった高木くんだ、と認識する。

「久しぶりだな。忘れられてたらどうしようかと思った」

「ごめん、坊主頭じゃなくなってたから、一瞬分かんなかったよ」

はは、と苦笑いを溢すと、

「ふはっ!そういうの、言わなきゃバレないのに言っちゃうところが花里だよなあ」

変わってないな、そう言いながら肩を揺らして笑う高木くん。

野球部だった彼のトレードマークは、坊主頭に少し垂れ気味の瞳の可愛らしい顔立ち。

今の彼は可愛らしい顔立ちに少し精悍さが加わり、短めの黒髪をアップバングにセットした髪型も相まって昔とはまた違った印象だけど、人懐っこさの滲む笑顔には当時の面影がちゃんと残っていた。
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