過保護な次期社長の甘い罠〜はじめてを、奪われました〜

3人の、思い出

大我は会社で"鬼専務"と呼ばれている。

最初は社長の息子ということを伏せてなんの後ろ盾もないまま営業部からスタートし、その実力が認められて社長の息子ということが公表され専務に昇進してからも、それに甘んじることなく自分の力でその地位を確立してきたらしい。

そういう専務だからこそ殊さら仕事に厳しいと聞く。

会議中、矛盾点や曖昧な点を淡々と冷静に指摘してくる姿だとか、妥協を一切許さない姿だとか、競争相手を容赦なくやり込める姿だとか。

そういう姿からつけられたあだ名が"鬼専務"で、"味方でいてくれる分には心強いけど、専務は絶対に敵に回したくない"と、専務と仕事を共にしたことがある人間は誰もが口を揃えてそう言うらしい。

"らしい"という伝聞形式なのは、私がそんな鬼専務の大我をまともに見たことがないから。

受付業務の私が会社で大我を見掛けるのはせいぜい彼が外出する時や帰社する時。あとは会議室の片付けで呼ばれた時にたまにすれ違うくらい。


だから、家での過保護な大我は知っているけど、会社での鬼専務な大我は知らない。

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