過保護な次期社長の甘い罠〜はじめてを、奪われました〜
「お前、いくらそいつのこと好きだからってそんなにいじめてちゃあ嫌われるぞ?」

「んなっ、そっ、そんなんじゃねー!」

図星を差されたらしいとしくんは、顔を真っ赤にして精一杯睨みを効かせながらも、そんな大我に一歩一歩近づかれる毎に今度は顔色を青くしていく。

「好きな女には優しくしてやんねーと」

でも大我はとしくんの精一杯の睨みをするりと躱して、あっさりと彼の手から私の給食袋を取り返した。


「……お前、どの口がそんなこと言ってるの?」

お前も典型的な好きな子にいじわるしちゃうタイプじゃん。と遥くんは俯いて泣いていた私の頭をよしよしと撫でながら呆れたように呟く。

チラリと遥くんを一瞥した大我は、そのセリフを無視してまたとしくんに向き直った。

「好きの伝え方、間違えんじゃねーよ」

そう言ってとしくんの頭をぐりぐり撫で回す。

「……ひっ!うっ、うるせー!」

手が伸びてきた瞬間殴られるとでも思ったのだろうか、一瞬怯んだとしくんはそう叫んで一目散に駆け出して行ってしまった。

ったく、最近のガキはよー、と走り去ったとしくんの背中に舌打ちをして取り返した給食袋をポンポンと手の上で弾ませながら、ほらよ、と私に渡してくれる。
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