過保護な次期社長の甘い罠〜はじめてを、奪われました〜
「それは作った甲斐があります」
ふふ、そんな遥くんを見て笑みが溢れる。
会社以外のところでは私も遥くんも昔のように名前で呼び合う。
もちろん大我と遥くんも。
「ねえ羽衣ちゃん、もう大我と暮らすのやめてそろそろウチに来ない?」
「おい遥。毎回来る度に羽衣を誘うんじゃねえ」
かぼちゃの煮付けを頬張ろうとしていた手を止めて、大我が遥さんをジロリと睨む。
「ええー、オレ毎回本気で誘ってるんだけど?」
「やらねえっつってんだろ」
「相変わらずガードが固いですねえ、うちの過保護な専務は」
はは、と面白そうに笑って今度は筑前煮のにんじんを摘む。
「こんなご飯で良ければいつでも食べに来てくれたらいいですよ。あ、いっそのこと遥くんも一緒に住んじゃいますか?この家無駄に広いですし、ねえ、大我?」
私も悪戯っぽく笑って、でも半分本気でそう言えば、
「おい、羽衣……」
大我が苦虫を噛み潰したような顔になる。
たって遥くんが来てくれれば変に意識しないで大我にも今みたいにいつも通りに振る舞えるし、あの過度なスキンシップも減るかもしれないし?
という打算のもとの発言だ。