過保護な次期社長の甘い罠〜はじめてを、奪われました〜
「それもいいね……って、あれ?羽衣ちゃんちびすけじゃなくなってる。…………もしかして、ようやく?」
遥くんが片方の口角を持ち上げてちらっと大我を見やる。
その視線につられるように私も大我を見るけど、それを無視して彼は黙々と生姜焼きを食べ進める。
「そうなんです、ようやくちびじゃなくなったって認められたみたいです」
だから私が代わりに答える。
「……あー、そう……。そういう……ね」
なんとも歯切れの悪い返事をして再びちらっと大我を見る遥くん。
「……おい、そんな目で見るな」
大我がギロっと遥くんを見るから、一体どんな目で見てるんだろうと私も横の遥くんに視線を移す。
でもその時には遥くんはもういつもの柔和な笑みを浮かべていて、
「羽衣ちゃんもついにちびすけ卒業かあ。なんか感慨深いね。ね?」
逆に顔を覗き込まれてしまった。
「そうですね、大我にはずっとちびすけとしか呼ばれて来ませんでしたから」
苦笑いで答える。
「あの小さい身体に大きなランドセル背負ってオレたちにタメ口きいてた羽衣ちゃんが、今やオレたちと同じ会社で働いて、ちゃんと敬語使って、しかも飯の世話までしてくれてるんだもんなあ。そりゃあもうちびすけじゃないよなあ、なあ、大我?」