過保護な次期社長の甘い罠〜はじめてを、奪われました〜



****



「うわー!普段the都会って感じのところで生活してるから、こういう自然に囲まれた感じ、落ち着きます」

「言っても新宿も都会だけどな?」

両手を広げて大きく深呼吸していると、普通にビルとか見えてるし、と大我が目を細めて愉快そうに笑う。


朝食を済ませて、お弁当の準備も終えて、大我の車で連れてこられたのは新宿御苑だった。

枝いっぱいに茂った木々の葉が様々な色に色付き、都会の喧騒から離れて静かに咲く花々。

バラに金木犀にサザンカに。

いろんな香りを胸いっぱいに吸い込みながら、木漏れ日を浴びつつ御苑内を大我と一緒に歩く。

「……あれ?大我っ、桜が咲いてますっ!秋なのに!」

するとポツポツと木々に咲く桜を見つけて私は駆け出す。

「ああ、十月桜だな」

「十月桜?」

「そう。春だけじゃなく、秋から冬にかけても咲く二期咲きの桜」

「そんな桜があるんですね。秋の紅葉と桜が一緒に見られるなんて、なんか得した気分です」

「そうだな。まあ紅葉はまだ始まりかけって感じだけどな」

優しく目尻を下げて私に追いついて来た大我は、徐に私の手を取って歩き出す。
< 60 / 180 >

この作品をシェア

pagetop