過保護な次期社長の甘い罠〜はじめてを、奪われました〜
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「うわー!普段the都会って感じのところで生活してるから、こういう自然に囲まれた感じ、落ち着きます」
「言っても新宿も都会だけどな?」
両手を広げて大きく深呼吸していると、普通にビルとか見えてるし、と大我が目を細めて愉快そうに笑う。
朝食を済ませて、お弁当の準備も終えて、大我の車で連れてこられたのは新宿御苑だった。
枝いっぱいに茂った木々の葉が様々な色に色付き、都会の喧騒から離れて静かに咲く花々。
バラに金木犀にサザンカに。
いろんな香りを胸いっぱいに吸い込みながら、木漏れ日を浴びつつ御苑内を大我と一緒に歩く。
「……あれ?大我っ、桜が咲いてますっ!秋なのに!」
するとポツポツと木々に咲く桜を見つけて私は駆け出す。
「ああ、十月桜だな」
「十月桜?」
「そう。春だけじゃなく、秋から冬にかけても咲く二期咲きの桜」
「そんな桜があるんですね。秋の紅葉と桜が一緒に見られるなんて、なんか得した気分です」
「そうだな。まあ紅葉はまだ始まりかけって感じだけどな」
優しく目尻を下げて私に追いついて来た大我は、徐に私の手を取って歩き出す。