過保護な次期社長の甘い罠〜はじめてを、奪われました〜
しまった……!早速不意打ち……!

「……野放しにしてたら、迷子になりそう」

その言葉に揶揄いの色を乗せて大我は言う。

「……なりませんよっ、もう小学生じゃないんですから……!恥ずかしいから離して下さい……」

「……イヤ?」

立ち止まった大我が私を振り返る。

うっ………!ズルい……。そんな捨てられた子犬みたいな顔で聞かれちゃったらイヤとは言えないじゃないか……!

「………イヤ、ではないです………」

その答えに満足そうに頷いて、そのまま私の手を引いて今度は並んで歩き出す。

………私が迷子になりそうだからね。ほら、新宿御苑って広いから。だから、手を繋ぐんだよね?

よってこれは決して甘い攻撃ではない。

そんな言い訳を並べている時点で絆されかかっているのには気づかないふり。




あの頃は手を繋いでいても兄妹にしか見えなかった私たちは今、周りから見たら恋人同士に見えちゃったりするのかな、なんて。

カサカサと落ち葉を踏みしめて、2つ並んだでこぼこの影を見ながらそんなことを思った。

< 61 / 180 >

この作品をシェア

pagetop