過保護な次期社長の甘い罠〜はじめてを、奪われました〜
専務の仕事、忙しいんだろうな。

一緒に暮らすようになって半年。

帰りが遅い日もあれば、急な呼び出しで帰宅したと思ったらまた出かけて行くこともあるし、休日出勤していることもある。

疲れているだろうに、"都会って全然自然がないですね"、いつだったかそう漏らした私のために、たぶん今日はここをデートの場所に選んでくれたんだと思う。

大我は昔から優しい。

言葉は乱暴だったり、やり方は強引だったりもするけど、いつだって優しい。

だから、私の心臓はさっきから忙しなくて大変だけど。

今日の攻撃は絶対ガードするって思ってたけど。

このまま大人しく寝かせてあげることにしようと思う。

「大我ももう三十路ですもんね」

「あほ。まだ29だ」

目を閉じたままの食い気味のツッコミに思わず笑ってしまった。


しばらくその整った寝顔を眺めていたら、風の悪戯で大我の前髪がさらりと目に掛かる。

それを手でそっと避けてあげた時。
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