過保護な次期社長の甘い罠〜はじめてを、奪われました〜
ぱしっ。その手を掴まれ、大我の瞳が静かに開いた。

「………なあ羽衣。デートもはじめてだった?」

この至近距離で、眩しそうに細められた憂いを帯びたその瞳に捉えられて、まるで身体全部が心臓になったみたい。

ドクドクドク、と全身から脈打つ音が聞こえてくる。

「……そ、そりゃあもちろん……っ」

22年間彼氏のいなかった私は、もちろんデートなんてしたことがない。だからこれが正真正銘の初デートだ。




「……じゃあこれで2つ目の"はじめて"も、オレのもんだな」




私の答えに、大我はにっ、と口角を持ち上げ艶やかに微笑んだ。

そして上半身を持ち上げ、今度はその瞳に熱を宿して、ゆっくりと私の方へ顔を近づける。

唇が触れるか触れないかの距離で、私を試すように一瞬止まる大我。

甘い攻撃は絶対ガードする、今朝そう決めたはずなのに。

だから不意打ちじゃないこのキスは簡単に躱せるはずなのに。



なのに、私はそうしなかった。

………だって、イヤじゃない。ううん、それどころかむしろ………。



ーーーーそしてそのまま大我は長いまつ毛をそっと伏せ、ちゅ、と私の唇をさらっていった。







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