過保護な次期社長の甘い罠〜はじめてを、奪われました〜
ーー強くなるための修行は、バッタやセミといったありとあらゆる昆虫を手掴みさせられたり、なぜかひたすら走り込みさせられたりと、今となってはもうあまり思い出したくはないかもしれない。
でも大我たちのおかげで引っ込み思案で泣き虫だった女の子から、活発でおてんばな女の子へと変貌を遂げた私は、としくんに意地悪されることもなくなった。
最もとしくんが意地悪してこなくなったのは、私が虫を鷲掴んで追いかけ回すくらい逞しくなってしまったからか、はたまた私に構ってくれるようになった大我や遥くんが怖かったからか、あるいはその両方だったのかは分からないけれど。
それ以来「たいが!はるかくん!」と暇さえあれば2人に纏わりついていた私を、それから彼らが大学進学で上京するまでの3年間、ずっと可愛がってくれた。
そんな私には、"不良たちを手懐けた小学生"という謎の異名がついたけれど……
年上から年下まで全方位カバー出来る女たらしの遥くんは私のことをういちゃん、と名前で呼んでくれたけど、大我は絶対私を名前では呼んでくれなくて。