過保護な次期社長の甘い罠〜はじめてを、奪われました〜

はじめての、気持ち

ーーーー大我が私をちびすけと呼ぶなら、私はずっとちびすけのままでいようと思っていたのに。

羽衣なんて呼ぶから。キスなんてするから。

あのクラス会の日を境に心の奥底に埋まっていた初恋の種が、いつの間にかちょっとずつちょっとずつ、芽を出してしまっていたんだーーーー。




急に泣き出して蹲ってしまった私に、坂崎さんは同じようにしゃがみ込んで「ちょっとあそこのカフェで待てる?」と、美容院の向かいにあるカフェを指差した。

私がこくりと頷いたのを確認すると、「ちゃんと待っててね?休憩もらってくるから」

そう言って私の頭をぽんぽんしてお店に戻って行く。


それから私は涙でぐちゃぐちゃの顔を拭いて、なんとか向かいのカフェまで行って。

ホットのカフェラテを頼んで、窓際のカウンター席に座った。

甘くて温かいカフェラテをひと口飲めば、強張っていた心が少しだけ解れる。

すっかり陽も落ちた街に、いくつも連なって進んでいく車のヘッドライト。流れては消えていくその光を、坂崎さんが来てくれるまで私はただただぼんやりと眺めていた。
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