過保護な次期社長の甘い罠〜はじめてを、奪われました〜
……今思えば、あの胸のチクチクが初恋の片鱗だったんだなあ。
あの頃大我にとって特別だった桃ちゃんは、今も大我の特別なんだろうか、なんて。
往生際悪くそんなことを考えて、自嘲する。
だってさっき見た大我の顔。桃ちゃんに向けられたその顔には、"愛おしい"が溢れていた。
だから、聞かなくても一目瞭然です、坂崎さん。
付き合っててもそうじゃなくても、桃ちゃんが大我にとって特別な存在であることは。
大我も人が悪い。
特別な人がいるのに私にあんなことするなんて。
大我ってそんな人だった?
……ううん、分からない、分からないよ。
だって私の知ってる大我は高校生の頃の大我と再会してからの大我だけ。
その間の10年の大我は何一つ知らないんだから。
こんなことなら気まぐれに名前を呼んだり、キスなんてしないで欲しかった。
甘い攻撃なんて、仕掛けて欲しくなかった。
私にこんな気持ち、教えて欲しくなかった……。