過保護な次期社長の甘い罠〜はじめてを、奪われました〜
「お帰り、羽衣」

「………ただいま」

リビングのドアを開けると、大我は既に帰って来ていて、ソファーで本を読んでいた。

私に気付くと、顔を上げて柔らかく微笑む。

普段大我の方が先に帰ってることなんて滅多になくて。

だから、お帰りと迎えられるだけで胸がきゅんと鳴く。

「……髪、可愛い。よく似合ってる」

近づいて来た大我が私の髪を掬って優しく笑う。

それだけのことに、私は泣きそうになる。

ありがとうございます、と慌てて大我から離れてキッチンで手を洗いながら、平静を装って夜ご飯はまだですか?と問う。

「ああ」

……桃ちゃんと、食べてこなかったんだ。

「……すいません、ちょっと頭が痛いので、冷蔵庫の作り置きおかず適当に温めて食べてもらってもいいですか?ご飯はもう炊けてると思うので」

今日は顔を合わせて食事をするのは辛い。

「大丈夫か?熱は……」

「だっ、大丈夫です……っ」

気遣わしげに顔を覗き込み、そっと額に伸ばされた手を、私はぱしっ、と咄嗟に払い除けてしまう。
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