過保護な次期社長の甘い罠〜はじめてを、奪われました〜

はじめての、不協和音

ーーーー懐かしい夢を見た。


"大我、こわい、たすけて!"


実家の居間で電話を片手にうずくまる小さい私がいる。


ああ、あれはいつだったっけ、確か私が小学4年生くらいの時。

お母さんから仕事で帰りが遅くなってしまうと連絡があった日。

もともと鍵っ子だったから、1人で留守番なんて慣れっこだったけど。

その日は風がものすごく強い日で、窓ガラスが風でガタガタ揺れる音とか、何かが飛んで来てぶつかる音とか、庭の木がガサガサ擦れる音とか。

そういうのが1人だと無性に耳について怖くて怖くて。

一度気になってしまうと大好きなテレビアニメを見ていても気が紛れない。

"お母さんのいない時に何かあったら、お隣の内藤のおばちゃんに助けてって言いに行くのよ?"

そう言われていたから隣の内藤のおばちゃんちをピンポンしに行ったけど、この日に限って留守だった。

泣きそうになりながら、私がこんな時に頼れるのはもう1人しか思い浮かばなくて。

"何かあったら連絡して来い"

いつだったかそう言って渡してくれた、携帯の番号が書かれたメモを引き出しから引っ張り出して、家の電話から祈るような気持ちで掛けた。
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