過保護な次期社長の甘い罠〜はじめてを、奪われました〜
「行ってくる」
朝食を終え、支度を整えてから大我が玄関へ向かう。
「はい、いってらっしゃい」
いつものように玄関まで見送りに行くと、靴を履き終えた大我の手が不意に私の方へ伸びてくる。
それを察知した私は、
「あっ、私も今日ちょっとギリギリなので、ここで……!」
「あ、おいっ……」
その手が私に触れる前に逃げた。
さすがに今のはあからさま過ぎただろうか……。
でも、触れられてしまったらきっとまた揺らいでしまうから。
リビングで息を潜めていると、やがてパタン、とドアの閉まる音がした。
ふぅ……。ため息を溢し、さて、と私も出勤する準備をするのだった。
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「ねえねえ羽衣ちゃん。今日専務が雑誌の取材受けるらしいよ?クリスマスに向けてうちから発売される新商品についてのインタビュー記事だって」
「…へえ、そうなんですね」
午後の比較的来客が落ち着いた時間帯。
意識と視線は入り口に向けながらも、渚さんと束の間のおしゃべりタイム。