シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
***
校舎の裏側にある時計塔。
生徒玄関からぐるりと回り込んで、少し林になっている場所を通る。
その林だけでも通るのを怖がる人がいるのに、さらにその先のホラー映画にでも出てきそうな重厚な時計塔になんて行きたいと思う人はごくわずかだ。
だから、この林部分にすら生徒はほとんど近寄らない。
なのに――。
「ねぇ! 待ってよ!」
今日に限って通り道に人がいた。
「別れるって、どう言うこと!?」
しかも別れ話の最中というとても気まずい場面らしい。
だからわたしは声が聞こえた時点でつい木の陰に隠れてしまった。
何で今日に限って……。
っていうか、この声って……。
聞き覚えのある声にまさかと思う。
昨日だってラブラブなところを見せつけられたばかりだ。
別れ話なんてあり得ないでしょう?
そう思ったのに、木の陰から少しだけ顔を出して見えたのは予想通りの人たちだった。
優姫さんと金多くん。
金多くんの袖をつかんで必死に引き留めようとしている優姫さん。
そんな優姫さんを見る金多くんの目は無感情そのもの。
大事な恋人を見る目なんかじゃなかった。
校舎の裏側にある時計塔。
生徒玄関からぐるりと回り込んで、少し林になっている場所を通る。
その林だけでも通るのを怖がる人がいるのに、さらにその先のホラー映画にでも出てきそうな重厚な時計塔になんて行きたいと思う人はごくわずかだ。
だから、この林部分にすら生徒はほとんど近寄らない。
なのに――。
「ねぇ! 待ってよ!」
今日に限って通り道に人がいた。
「別れるって、どう言うこと!?」
しかも別れ話の最中というとても気まずい場面らしい。
だからわたしは声が聞こえた時点でつい木の陰に隠れてしまった。
何で今日に限って……。
っていうか、この声って……。
聞き覚えのある声にまさかと思う。
昨日だってラブラブなところを見せつけられたばかりだ。
別れ話なんてあり得ないでしょう?
そう思ったのに、木の陰から少しだけ顔を出して見えたのは予想通りの人たちだった。
優姫さんと金多くん。
金多くんの袖をつかんで必死に引き留めようとしている優姫さん。
そんな優姫さんを見る金多くんの目は無感情そのもの。
大事な恋人を見る目なんかじゃなかった。