シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
 お母さんが事故に遭って意識不明の重体になったのが1年と半年前。

 わたしの高校入学式直前のことだった。

 そしてそのまま意識が戻らなくて、2年になる始業式前に容態が悪化して亡くなってしまった。


 せめて一度くらいは目を覚ましてほしかった。

 そうすれば、ちゃんとお礼とかお別れとか出来たのに。

 今でもそんなことを考える。


 でも、わたしと眞白は寝たきり状態のお母さんを見続けて、ある程度の覚悟は出来てたんだと思う。

 悲しいし、辛いけれど、半年経った今はある程度お母さんの死を受け入れられている。


 ただ、義父さんはそうじゃなかったみたい。


沙奈(さな)、2人が帰って来たよ……」

 写真に向かってそう報告した義父さんは、一度わたしたちに場所を譲ってくれる。


 お線香をあげて「ただいま、お母さん」と2人で挨拶を済ませると、立ち上がったわたしたちに変わってまた義父さんがその場所に座り込んだ。

 寝るときとご飯を食べるとき以外はここが義父さんの定位置になってしまっている。


 一応朝はちゃんと仕事に行っているけれど、しょっちゅう早退しては家に帰ってきてこの状態だ。

 たまにお酒が入っているときもあって、そういう時はご飯も食べずベッドにも入らずここで寝てしまうから、もはや心配を通り越して迷惑な状態になってる。
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